BEHIND THE PRODUCT #22
2022.11.21

ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線と深いプロダクト愛でお届けする好評連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無尽に語ります。今回も5つのブランドから気になる最旬アイテムをピックアップ!




Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu


SUGARHILL

中綿入りN3-Bジャケット

ミリタリーを大胆な染めにするところに挑戦する姿勢を感じる(武井)

来田拓也(以下 R):カモ柄をイメージした独特なムラ染めがインパクト大な、SUGARHILLのN3-B型の中綿入りジャケットです。

武井幸久(以下 T):新しい世代のデザイナーならではの発想ですよね。ミリタリーアイテムのアレンジって、使い古されたアイデアも多いですけど、こうやって大胆な染めでやるのは挑戦する姿勢を感じます。

渡邊敦男(以下 W):そうですね、面白いことに挑戦しているのが伝わってきます。実際に着るとそんなに奇抜じゃないかもしれないし。

R:ファーの部分が茶色になっていて、全体的に上品に仕上げられてますよね。

W:他の人と違ったミリタリーウェアのチョイスが欲しい人にはうってつけかも。

日本の若手デザイナーズブランドの中でも注目株のSUGARHILL。ミリタリーのN3-Bをベースにしながら、それを染めで表現するという新しい発想が光る一着。ミリタリーファッションの枠を、これまでとは違う形で超えてきた力作。

SUGARHILL
COAT  ¥93,500
4K
TEL:03-5464-9321



th products

総柄ジャケット

“アントワープの系譜を継いでいる感じがします”(来田)

R:デザイナーの富永航さんによるグラフィックが目を引く一着です。しかもインクジェットプリントというのが驚きでした。

T:キルティングとかパイピングのやり方がエレガントな感じですね。

R:柄としてはスノーカモ。今シーズンはカモ柄でキルティングジャケットを作っているブランドが多いので、トレンドにもハマってます。

W:身体を鍛えてるビジネスマンとかが着ると似合いそう。

R:th productsのアイテムは基本的に、シルエットが綺麗で黒とかモノトーンが多いイメージ。アントワープの系譜を継いでいる感じがして、アーティストとのコラボレーションもよくやっている印象です。

T :グラフィックの雰囲気がストリートではなく、アーティスティックですよね。

W:品があるから、やっぱり大人のためのアイテムかと。

th productsはTARO HORIUCHIによるメンズブランド。イギリスのLAVENHAMにも通じるようなキルティングジャケットを、もっとアーティスティックに表現。

th products
WT CAMO PADDED MILITARY JACKET ¥84,000
th products
https://thproductsonline.com/



FUMITO GANRYU

ポンチョダウンジャケット

“素材は機能的でも、良い意味でテックウェアには見えない”(武井)

R:サイドのジップを開くと、ポンチョとしても着られる遊び心あるダウンです。

T:​​実に丸龍(文人)さんらしいアイテムというか。

W:電車で移動の時とか暑くなるから、そういう意味でも良いかも。

T:素材は機能的ですけど、良い意味でテックウェアには見えないですよね。

W:このくらいシンプルな方が色々なスタイリングで楽しめそう。

R:サイドからインナーを覗かせても良さそうですよね。

T:こういったアイテムが出てくると、ますますブランドとして今後が楽しみになります。

FUMITO GANRYUによるダウンジャケットは、サイドのジップを開くとポンチョ風に。光沢感のある素材使い含め、ファッション的アプローチが色濃い一着に仕上がっている。

FUMITO GANRYU
2WAY DOWN JACKET ¥137,500
FUMITO GANRYU
fumitoganryu.jp



C.E

パデッドアノラック

“野暮ったい素材で作ってるのに、ストリートらしさが出てる” (渡邊)

R:パッチやグラフィックがアクセントになっていて、C.Eらしさを感じるアノラックです。

T:C.Eだからこそ作り出せるカッコよさなんだろうな。

R:アイテムが違ってもいつも独特の雰囲気がありますよね。

W:それがスケシンさんの世界観なんでしょうね。グラフィックがカッコイイのは当然だけど、野暮ったい素材で作ってるのに、ストリートらしさが出てる。

T:特定の“世代”を感じさせないですよね。一定の年齢層に向けて作ってるわけでなくて、好きな人が着るみたいな。

W:僕らの世代には馴染み深くて、若い子たちにとっては新鮮。そのバランス感がすごく良い。個人的にはヨーロッパの田舎で、誰かが着ていても馴染みそう。

アイテムとしては80、90年代のスポーツ系古着のような雰囲気もありながら、独特なグラフィックのパッチによって実に2022年的なC.Eのブルゾン。これがまた古着となって循環して行くことも感じられる一着。

C.E
HALF ZIP JACKET ¥52,800
C.E
www.cavempt.com



NEEDLES × VANS

アシンメトリーシューズ

“VANSも予想外の提案だったんじゃないですか?”(武井)

R:NEEDLES × VANSとしては2回目のコラボレーションです。タグがNEEDLESカラーの紫になっていて、左がスリッポン、右がERAっていうユニークな作りになってます。​​ソールはウルトラクッシュなので、かなり歩きやすいと思います。

W:んー、面白いけど違和感はあるよね(笑)。

T:この企画よく通りましたね(笑)。VANSも予想外の提案だったんじゃないですか?

W:NEEDLESだからこそ実現できた気はしますけど。

R:それこそNEPENTHESの方って、左右で違う組み合わせのシューズを履いてませんでしたっけ?ネガティブ履きって呼ばれてた気が。

T:流行ってましたね。個人的にはクラシックな装いは残しつつ、ウルトラクッシュみたいな新テクノロジーを採用している点に好感を持てました。

右足はSLIP-ON、左足はERAという、VANSの定番を左右違いで一足でリリースしたNEEDLESとのコラボレーションシューズ。よくぞVANSの工場も受け入れたと拍手を送りたい。

NEEDLES × VANS
ERA / SLIP-ON ¥16,500
NEPENTHES
TEL:03-3400-7227



(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)



渡邊敦男(『PRODISM』編集長)

1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。

スタイリスト 来田拓也

1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。

武井幸久(HONEYEE.COM)

1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。