BEHIND THE PRODUCT #2
2021.12.07

「2021AWセレクトショップのイチ押し編」 後編

ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線とプロダクト愛でお届けする連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無人に語ります。今回は「021AWセレクトショップのイチ押し編」後編。


Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu


EDIFICE / LOOPWHEELER for LOWERCASE

“LOOPWHEELERって細身のイメージでしたけど、コレは好きなサイズ感”(来田)


R: EDIFICEから出たLOOPWHEELER for LOWERCASEのウールスウェットです。

W: うーん、まず大前提なんだけど、なぜウールで作ったんだろう。

R: 着ると不思議な感じで、普通のスウェットとは違う柔らかさがありますね。

W: じゃあ、スウェットというよりかはセーターだよね。お客さんってLOOPWHEELERのスウェットが欲しいんじゃないのかな? まぁいいか、余計なお世話ですね(笑)。

R: LOOPWHEELERって細身のイメージでしたけど、コレは好きなサイズ感です。

W: さすが(LOWERCASEの)梶原(由景)さんって感じですね!

T: 以前、梶原さんに何度かインタビューしたことがあって、「なぜLOOPWHEELERにハマったんですか?」って聞いたら、最初は「どうせありがちな日本製スウェットだろう」と思って全然興味なかったんだって。でもたまたま(LOOPWHEELERの)鈴木(諭)さんに一着もらって試しに着てみたら、「コレはヤバイ」ってその魅力に気付いたらしい。

W: 何度も言うけどウールっていうところが秋冬仕様だよね。

T: ウールだけど気負いがなく着られるし、上品さもあって上手に作られてるなって思う。

W: スウェットに上品さって求めるんですかね?

T: 自分は求めちゃうかな。柄が入ってるアメカジっぽいのを着るよりも、シンプルな方が好きだし。

W: じゃあニット的な解釈ですね。おしゃれカジュアルのニットみたいな。

T: ここ最近、LOOPWHEELERってこんなに生産能力あったんだってことに驚いてる。吊り編み機を使っているから、効率も悪いわけじゃないですか? そんなに大量生産できないはずなのに、色んなブランドとの別注を実現してリリースしている。規模を拡大してやってるのかな?

W: それこそ色々なコラボレーションのを着させてもらったんですけど、僕はLOOPWHEELERのシルエットが合わないんですよね。着丈が短くて、袖も長いのじゃないとツンツルテンになっちゃうから。いちばん大きいサイズを買っても着丈が短くてピンと来なかった。だから別注をするんだったらシルエットを徹底的に変えてほしいかなと。もっと言えばLOOPWHEELERってスウェット屋さんじゃないですか? 僕はファッションブランドだと思ってないから、カジュアルなブランドじゃなくて、海外のメゾンブランドとやった方がコラボレーションの意味があると思う。それこそキム・ジョーンズのディオールやジル・サンダーとかのコラボをやって欲しいです。

T: それは確かに見てみたい。元々はホッコリ着たい人に向けてスウェットを作ってたんだけど、作りの良さが尋常じゃないから、思った以上にファッションの人が反応したっていう流れもあるかも。

W: だと思います。そもそも僕は街着としてクルーネックのスウェットを着ないので。襟やボタンが付いてないと部屋着っぽいイメージになっちゃうから苦手。あ、フードつきのパーカはたまに着るけど(笑)。

T: たしかに敦男さんは普段はシャツを着ているイメージかも。

W: クルーネックのスウェットを着て外出したのなんて、数年ないかも。熱が出て寝巻きのまま医者へ行くときぐらいですね。だから僕のLOOPWHEELERの解説なんて邪論でしかないので、ファンの方はお気になさらずに(大汗)。

旧式の吊り編み機による昔からの製法にこだわった日本のスウェットブランド LOOPWHEELERと、LOWERCASE梶原由景による鉄板コラボレーションをEDIFICEが依頼。スウェットのデザインなのにウールで作り、シルエットもビッグシルエットにアレンジするなど、ありそうでなかったプロダクトに。

LOOPWHEELER for LOWERCASEツリアミウールルーズクルーネックスウェット
 ¥30,800/エディフィス 新宿 TEL : 03-5366-5481




L’ECHOPPE × SEVEN BY SEVEN 別注 レザーマウンテンパーカ

“潔いっていうか、ファッション度数がすこぶる高い”(渡邊)


R: インパクト抜群のこちらは、贅沢にピッグスエードを採用したマウンテンパーカです。

T: SEVEN BY SEVENって結構攻めますよね。

W: SEVEN BY SEVEN、僕のなかでは来田君がよく借りてくるブランドのイメージかな。

T: 前に展示会へ行ったときにデザイナーさんからも色々と話を聞いたんですけど、ここのブランドってやたら凝るんですよ。

W: でしょうね。汚れるの考えたら、ノイローゼになりそう。潔いっていうか、ファッション度数がすこぶる高い。

R: 本来もう少しアウトドアっぽいカラーをSEVEN BY SEVENのインラインで出しているんですけど、今回L’ECHOPPEが白 × 水色を別注で作ったみたいです。

T: すごい勇気のカラーリングだよね。

R: 昨日L’ECHOPPE行ったんですけど、最近失いつつあった物欲が久々に掻き立てられました!

T: L’ECHOPPEってアイテムの方向性がしっかりしていて、あんまりバラついてない絞り方に好感が持てます。

R: マウンテンパーカなのにレザーっていう、実際に初めて見て自分でも買おうか悩みましたね。

T: これでいくらぐらい?

R: ¥140,000ぐらいですね。

T: ちなみに敦男さんはアウターにいくらまで出す?

W: 欲しいものだと10万台後半までぐらいは出してますよ。

R: 僕も高くてARC’TERIX Veilanceのアウターとかで、同じぐらいですかね。

T: 自分は10万円超えるとウッてくる。最高額でLewis Leathers買ったぐらいかな。

R: けどL’ECHOPPEはこういう奇抜なアイテムでも、着こなしで提案してくれるから買い易いのかもですね。

T: そういう意味では現在いちばん提案力が強いショップかも。

R: たしかに勢いがあるなぁって感じますね。

W: この配色がL’ECHOPPE側のアイディアだったらすごいよね。白のピッグスエードをボディに使って、差し色で水色を入れるっていう。

R: 着るか着ないか、買うか買わないかは別として、モノとしてはカッコイイですよね。

W: ライフスタイルありきだよね。クルマ移動の人は汚れとか気にならないだろうけど、接触が多い生活だと怖いじゃん。飲み屋に行ったら、怖くてしょうがないよ。おそらくこれを買う人たちは、醤油とかワインとかがこぼれたりしても気にしないんだろうね。まあ、そんな人たちの服ってことでしょう。

提案力に定評のあるセレクトショップのL’ECHOPPEと、ミクスチャー感覚の高いアイテムで知られるSEVEN BY SEVENによる別注アイテム。アウトドアなマウンテンパーカのデザインでありながら、素材にはピッグスエード、そしてカラーは白とブルーという“攻めた”別注。

L’ECHOPPE × SEVEN BY SEVENレザーマウンテンパーカ ¥17,6000 /レショップ TEL : 03-5413-4714




FREAK'S STORE  銭湯・サウナ 別注スウェット、ロンT

“これを着てサウナにいってください。以上です(笑)”(渡邊)


W: 前回紹介したオリジナルアウターを作ってるお店とは思えないほどの差異ですね(笑)。

R: まあ、これも違う意味でFREAK’S STOREっぽいと思います。

T: いま日本は特に若い世代でサウナと銭湯が盛り上がっているでしょ。20代後半、30代前半ぐらいの子にはウケるんじゃない?

W: じゃあ「これを着て銭湯にいこう」って感じで! 終わりでいいですか?

T: 結論早いわ(笑)。ちなみに敦男さんは銭湯ハマってる?

W: 好きですけど、マメに行ってるわけではなくて、旅行に行ったときとかにサウナに入るぐらいですね。だけど僕のまわりはサウナーが多いですよ。

T: まあ、ちょっとしたカルチャーにはなっているのかもしれませんね。

W: そうですね、トレンドがあるからギャグでこういうのを作ったのは分かります。なのでこれを着てサウナにいってください。以上です(笑)。

トレンドに敏感(=流されやすい)のもある種セレクトショップの特徴。都内の銭湯「白山湯」とコラボレーションしたスウェットはFRUIT OF THE ROOMのボディを使いながら「FROCLUB」。SAUVENIRに別注したロンTのバックプリントは某タバコブランドのロゴっぽくMizuburo(水風呂)。シャレです、シャレ。

FROCLUB×FRUIT OF THE ROOM×FREAK’S STORE 銭湯ウェア¥5,995、SAUVENIR×FREAK’S STORE 水風呂ロングスリーブTEE ¥4,400/フリークス ストア渋谷 TEL : 03-6415-7728




SHIPS any FUJITO SKATE BOARDING フリースパンツ&キャップ

“SHIPSらしいセレクトセンスを感じるブランドかも”(武井)


W: まあ、フリースパンツとフリースキャップ……だね。

R: FUJITOはクラシックだけどカッコいい洋服を作っている福岡発のブランドで、SHIPS anyで取り扱っています。そのFUJITOのスケートボーディングラインも今季からSHIPS anyで展開が始まったみたいです。

T: 普通にツッコむと、これのどこがスケートボーディングなんだろう(笑)。

R: これまで本当にクラシックな洋服しか作ってなかったのが、プリント物とかラフなアイテムをリリースしてるみたいです。デザイナーの方も実際にスケートをするらしく。そういう背景も人気なのかなと。

W: そういう説明を聞くと、たしかにシルエットや色味はスケーターが穿いてそうなパンツだけど。

R: SHIPSって実はJET BLUEというレーベルを展開していた時代からスケートブランドをセレクトしていて、ニューヨークのインデペンデントなブランドも仕入れてたんですよ。

T: 昔、原宿にAcycleっていうSHIPSのお店があって、あそこのセレクトもかなりストリートでマニアックだった。当時から他のセレクトがビジネスライクなのに対して、ディレクターの感性でかなり自由にやらせてる感じがあって。そのお店がなくなっちゃったのは残念だった。これもそういうSHIPSらしいセレクトセンスを感じるブランドかも。

W: SHIPSって店舗内でそういうストリート感を100%表現できていないから残念ですよね。ストリート系のブランドもちゃんと取り扱っているのに、SHIPSってやっぱりキレカジのイメージが強いから、イマイチ伝わってこないっていう。リアルのスケーターたちは多分SHIPSに足を運ばないよね。そこのバランス感というか距離感をもっと詰めたらいいのになって思う。

T: もちろんフロアで分けているとは思うんだけど、それが店に入ったことのない人間にはいまいち伝わらないのがもったいないかも。

R: たしかにお店はスーツのイメージが強いです。だからリースのときにあそこを通ると、いまだに緊張します(笑)。

W: そこが魅力でもあるんだけどね。SHIPSはストイックに我が道を突き進んで欲しいなぁ。

SHIPSのセレクト眼を感じる福岡発のブランド FUJITOによる、スケートを意識したライン FUJITO SKATEBOARDINGのフリースを使ったアイテム。カジュアルでストリートな中にもどこか上品さを感じるフリースアイテム。

FUJITO SKATE BOARDING  フリースパンツ ¥25,300、フリースキャップ ¥10,780 / シップス エニィ 渋谷店 TEL : 03-3496-0382




L’ECHOPPE 別注 YUKETEN Land Jordan

“コレはギリギリのところ攻めてますね!(笑)”(武井)


R: yuketen(ユケテン)は昔からあるブランドですけど、逆輸入っていうか、最近また注目を集めています。こういうユニークなプロダクトも展開していて面白いですよね。

T: 恥ずかしながらこのブランド自体、全然知らなかったです。

R: アメリカ在住の日本人デザイナー、YUKI MATSUDAさんがやっているシューズブランドです。今はMONITALYっていうブランドでウェアもやってて、これまではアメカジ臭いイメージだったんですけど、今回のシューズはストリートを感じさせる配色の一足です。

W: このブランドは昔から無骨でしっかりとしたモノを作ってる感じがします。

T: しかしコレはギリギリのところ攻めてますね!(笑)

W: 申し訳ないんですが、僕はこれ履かないですね。パロディ的なモノづくりをしましたってことなんでしょうけど、僕は普通にスニーカーでいい。

R: 実際に履くか履かないかわからないですけど、仕事柄やっぱり面白いので目は引かれますね。

T: こういう思い付きみたいなものを、クラフツマンシップできちんと作るみたいなことがポイントのプロダクトだね。ある程度お金のある人に向けたブランドの遊び心なのかも。

yuketenによるハイカットのシューズは、デザイン的には“あのスニーカー”へのオマージュを感じる一足ながら、レザーシューズとしての確かな作りに裏打ちされたプロダクト。

yuketen レザーシューズ ¥143,000/ レショップ TEL : 03-5413-4714




今月のまとめ

W: 今回はセレクトショップで扱う新作を来田くんにピックアップしてもらいました。辛辣な意見も多々ありましたけど、あくまでもリスペクトありきなので、ご了承いただけたらなと。当然、各ショップの担当者からの感想というか、目の据わったご意見は僕あてにダイレクトで来るでしょう(鬼汗)。ってことで、武井さん、来田くん、次のテーマは何にしますか?

T: テック系のウェアとかどう? トレンドもあるけど、実際に欲しいっていう気持ちもある(笑)。

R :いいですね、テック系はいろんなブランドからリリースされていますし、デザインのバリエーションも豊富なので。いまからリサーチを開始します!

W: じゃぁ今月はここまで。また来月!


(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)



渡邊敦男(『PRODISM』編集長)

1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。

スタイリスト 来田拓也

1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。

武井幸久(HONEYEE.COM)

1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。