BEHIND THE PRODUCT #1
2021.11.24

「2021AWセレクトショップのイチ押し編」 前編


ファッションプロダクトのストーリーやその裏側にあるあれやこれやを、少しだけ厳しい目線とプロダクト愛でお届けする連載企画。雑誌『PRODISM』編集長の渡邊敦男と『HONEYEE.COM』編集長の武井幸久、そしてスタイリストの来田拓也が毎回テーマを決めてピックアップしたモノについて縦横無人に語ります。今回は「021AWセレクトショップのイチ押し編」前編。



Edit&Text : Atsuo Watanabe(PRODISM)&Yukihisa Takei(HONEYEE.COM)
Styling : Takuya Raita
Photo : Kengo Shimizu


Columbia ×BEAMS PFG  ジャケット

“釣り用アイテムをアウトドアかつフィールドギアみたいな感じで街着として使うのが、トレンドになっている”(渡邊)


来田拓也(以下R):まずはBEAMSからピックアップしたこちら。コロンビアのフィッシングウエアラインの別注ジャケットです。

武井幸久(以下T): 敦男さんって釣りはする?

渡邊敦男(以下W): やりません。基本的にアウトドアは消極的ですが釣りは人生で2、3回やった程度です。釣ったときにサカナの口に針が刺さっているのが可哀想で。『これってエゴの極みじゃね』って子供ながらに思ってしまったんです。

T: とはいえ、いま日本では釣りがメチャメチャ流行ってますよね。特にファッションシーンで勢いを感じます。

W: DAIWA PIER39の成功例とともに、釣り用アイテムをアウトドアかつフィールドギアみたいな感じでファッションのアウターとか街着として使うのが、トレンドになってますよね。絶対に釣り好きとは思えないような華奢な若者が街でDAIWA PIER39のアウターとか着てますもんね(笑)。

T: DAIWA PIER39はなぜあそこまで当たったと思います?

W: やっぱりデザインの仕掛けとかプレゼンテーションの仕方が上手かったんじゃないですか? 端的に言えばデザインが今時っぽい。ボックスシルエットのブルゾンやワイドパンツなど。たしかにカッコいいなと思います。

R: DAIWA PIER39はシルエットも綺麗ですし、値段が機能性の割に安いですよね。街で着られるっていう、言い換えると街と自然がつながるのが意味合いも強いのかと。

W: 俺はとにかく“ワイド”、“ビッグシルエット”みたいなイメージが強い。それが釣り具のアウトドア感と相まって新しい表情になっている。逆を言うと、どのブランドでも見てくれが一緒じゃんみたいな感じはするかもね。だから誰々が作ってるとか、ベースはこうだとか、装飾するウンチクがセールスポイントになって、オシャレになっていくみたいな。こういうメンバーがプロダクトとかヴィジュアル作ってるみたいなストーリーが、今の消費者に刺さってて。だから釣りっていうよりも、釣りに関連するプロダクトをファッションに落とし込んでるっていう要素が強いと思う。でも、このジャケットを着て、実際に釣りをする人なんか少ないんじゃない? 汚れるのイヤじゃん(笑)。

R: そんな気がしますよね。あとはこれもそうだけど意外に単色使いっていうのが釣りウェアでなかったのかなって。オールブラックとかチャコールグレーとかカーキだとか、いまでなかったから新鮮に映るのだと思います。


アウトドアブランドのColumbiaによる、フィッシングにフォーカスしたライン Columbia PFG(Performance Fishing Gear)とBEAMSによるコラボレーション。ライトアウトドアアクティビティからシティウェアまで幅広く使えそうなプロダクト。

Columbia × BEAMS PFG ジャケット ¥49,500/ビームス 原宿 TEL : 03-3470-3947




ADAM ET ROPÉ  オリジナル レザーモッズコート

“ミルスペックとして考えると、絶対あり得ないモノ。それをあえて作る発想が好き”(武井)




R: ADAM ET ROPÉ のレザーコートです。ちなみに素材はシープスキンなんです。

W: スタンドカラーのモッズコートみたいな感じ?

T: 思いっきりそうですね。

W: シープスキンという素材感がいまは新鮮なんじゃないですか?

R: ADAM ET ROPÉのオリジナルはモノが良いし、インポートが作るブランドのアイテムに近しい雰囲気があって、何か上手いですよね。

T: すごくいいけど、敦男さん、これいくらだったら買う?

W: ごめんなさい、 僕は買わないかも(汗)。というのもレザーものって僕自身が着るよりも他の人が着ているのを見る方が好きなんです。僕にレザーは似合わない。併せて言うとモッズコートは定番だけどいまの気分じゃないかなと。だから余計に他の人にオススメしたくなります。カッコイイことに間違いない一着なので。似合う人は絶対似合う。若い人にもいいけど、ADAM ET ROPÉ のオリジナルだから、常連のお洒落おじさんが似合いそう。お客さんの欲しいものをちゃんと理解して具体化している。ADAM ET ROPÉに行く人ってさ、合皮みたいなの嫌がるだろうし、本当に良いモノを一点張りで買うみたいな、わかっている人たちが足を運ぶお店なので。ショップオリジナルって本来はこういう服なんでしょうね。理にかなっている。

R: ああいう場所に行きそうな大人の人たちが着てるとカッコイイですもんね!

T: くたびれていっても良い感じになりそうだよね。僕は普段は結構スウェーデン軍とかの、普通の軍モノを買うんですよ。セレクトショップが手を加えたものよりも、普通のミルスペックを中田商店とかで買って着る方が好きで。

W: なおさらこれは僕よりも武井さんがトライした方が良いんじゃない?

T: まあ、この感じはまさに見た目も結構好き。

R: 僕も好きですね。

W: じゃあ2対1で勝負あり(笑)。スタンドカラーなのも良いよね。フードが付いてないからスッキリしてるし。そこら辺のディテールが絶妙に上手い。

T: 軍モノでスタンドカラーのモッズコートって、形も含めて絶対カッコ良いじゃないですか。だけどミルスペックとして考えると、絶対あり得ないモノ。それをあえて作る発想が好きです。

W: お客さんが似合いそうな、欲しいモノを形にしてるっていう気はします。

T: 普通のミリタリーのコートとか買って着るけど、とはいえすごいチープな感じはするんですよ。自分でもいい歳してチープなモノ着てるなって思ったり。良いんだけど時々ちょっと恥ずかしくなるみたいな負い目もあるんで、そういう気分の時にもし出会って、お金あったら買っちゃうかも(笑)。

R: レザーなのに無骨ではないですもんね。上品さもありますし。

W: シープスキン特有の滑らかさとツヤだよね。くれぐれも有刺鉄線に引っかけないように(笑)。シープスキンはすぐにビリっていっちゃうから!

T: あえてこのジップも黒で落ち着かせたのも良いですよ。普通の軍モノの真鍮っぽいやつじゃなくて、本当に上品な方に振ったんだなって。


オリジナルのクオリティに定評があるセレクトショップADAM ET ROPÉ。定番的なミリタリーデザインを上品なレザーにすることでタイムレスな雰囲気の逸品に。

ADAM ET ROPÉレザーモッズコート ¥89,980/アダム エ ロペ ジュンカスタマーセンター TEL : 0120-298-133



BEAUTY&YOUTH × Needles別注 モヘアカーディガン

“別注として良いものが生まれる条件が全部揃っている”(渡邊)




R: BY(BEAUTY&YOUTH)がNeedlesに別注したモヘアニットです。上品なアーガイル柄も良いかなと思いました。

T: 実は今年Needlesのモヘア買ったんですよ。一昨年ぐらい前からずっと気になってて、展示会に行く度に悩んでいたんだけど、ついに今年買った。

W: それは無地?

T: 無地、普通の濃いブラウンみたいな。

R: 今年はメンズ・ウィメンズ両方ともモヘアの流行り方がすごいんです。

W: BYの今季のテーマでもある“クラシック”ともシンクロしていて流石の完成度。モヘアってやっぱり軽いのが嬉しいよね。

T: Needlesのしつこいくらいに同じアイテムをリリースする姿勢が好き。例えばトラックジャケットにしても、モヘアのカーディガンにしても1シーズンで終わるのではなくて、次のシーズンも色や柄、素材を変えて登場する。トラックジャケットとパンツなんて十数年出し続けてるし。そのしつこさがだんだん浸透してきて、結果モヘアに火を点けちゃうみたいな。結果的にはもともとはNepenthesっていうセレクトショップのオリジナルじゃないですか。なのにBYまでもが別注しにくるっていうのが痛快ですよね。

R: いまでは世界のNeedlesになっちゃいましたもんね。A$AP Rocky(率いるAWGE)とコラボして、しまいにはVirgil AblohがSouth2 West8まで着ていましたからね。

W: Needlesってコスパの良さも魅力だよね。値段的にもお求めやすい。コレクションブランドというにはベーシック過ぎるんだけど、ショップオリジナルのブランドというにはもったいないぐらいの立ち位置に昇華している。多分プロダクトの作り方とか、武井さんが言ってるみたいに継続性で染み込ませてるのが功を奏してる。こういう別注とかも、各セレクトショップのバイヤーが無意識のうちにNeedlesを選択しているんじゃないかな。別注として良いものが生まれる条件が全部揃っている。もう絵型の段階からアーガイルを描いた時点で、絶対良くなるぞって分かるもんね。正直、サンプルをみてどうかな?って思うコラボ商品っていっぱいあると思うけど、これはスタートの時点でOKみたいな一着でしょうね。


Needlesの定番となっているモヘアのガーディガン。このアイテムでは定番のアーガイル柄をベースにBEAUTY&YOUTHが別注。暖かさはありながらも風は通す素材感かつカーディガンなので、寒暖差のはっきりしない季節に大活躍。

NEEDLES × BEAUTY&YOUTH モヘアカーディガン ¥29,700 /ビューティ&ユース 渋谷公園通り店 TEL : 03-5428-1893



FREAK'S STORE  オリジナル  プリマロフトジャケット 

“セレクトショップのオリジナル服を作るという本質を捉えてる“(渡邊)





W: 実のところFREAK’S STOREのオリジナルウェアを拝見する機会ってあんまりなかった。

R: これプリマロフト®(超微細マイクロファイファー素材)を使っているんです。軍モノのレベル7を実現しているし、プライス含め絶妙に完成度が高いかなと思って紹介させていただきました。

T: 本当だ。この作りでオリジナルってのはすごいね。

W: それでいくらだっけ?

R: 16,995円です。

W: 決め手だよね。プリマロフト®使ってる実用性の高いアウターで、ファッション的にもこなれてる。そしてリーズナブルっていうさ、ショップオリジナルの核心に迫るプロダクトだと思う。

R: 正直これは値段的にもかなり嬉しいですよね。3色展開で、他にもベストとかもあるみたいです。

W: イマっぽい感じでサイズ取りもデカい。しっかりとトレンドを意識しているのが素晴らしい。

R: 今回セレクトショップでリサーチ廻った中でも、FREAK’S STOREはミリタリー色が強いと思いました。

W: これを企画してる人たちが洋服を知っているんだろうね。ミルスペックをはじめガチなものを理解していて、オリジナル商品に落とし込んでるから、ルーズなシルエットみたいなサイジングを実現できるっていうね。

R: 他にコラボものとかあったんですけど、正直なところ、このクオリティをこの値段で出したら、他が売れなくなりませんかね?(笑)

W: まあ、ブランドモノが好きな人たちはそっちを買うんじゃない? ゆえにこれはセレクトショップのオリジナル服を作るっていう本質を捉えてるよ。トレンドを感じさせるデザインを手頃な値段で楽しめて、かつプリマロフト®を使うことで機能性も担保できている。

T: FREAK’S STOREって生誕の地が茨城県の古河っていう所なの。そこに本店がいまだにあって、デカい駐車場も完備しててそのエリアでも人気がある。だからなのか、東京生まれのセレクトショップに比べて、目線とか金銭感覚が地方の人に寄り添えているのかもって感じるんだよね。このアウターが1万円台だったら有難いよねっていうのが、理解できているということね。

W: その地元ではこれを着たヤンキーがコンビニに座っているかも(笑)。

T: 着てて欲しい(笑)。やっぱり良い意味で都心と地方で生まれたセレクトショップの違いなのかな?

R: 逆にイナたいモノが今っぽかったりするじゃないですか? しかもプリマロフト®でこの値段なのはすごいですよ。

W: 低価格なのにこなれている。僕はセレクトショップのオリジナルってこなれ具合が肝だと思っているから。普通の子たちがコレを着れば、おしゃれに見えるでしょ。それが素晴らしい。

T: 中田商店でユーズドの軍モノ買うプライスと同じぐらいだから、こういう色とかサイズ感なら、こっちを買うかも。


ミリタリーウェアの要素を取り入れたFREAK’S STOREのオリジナル。アイテムの実用性と高い汎用性がありながら、イマ感をしっかり取り入れたオリジナルアイテムの好例。そして何よりもリーズナブルなプライスに拍手。

FREAK’S STORE オリジナル プリマロフトジャケット ¥16,995 /フリークス ストア渋谷 TEL : 03-6415-7728



UNITED ARROWS & SONS by DAISUKE OBANA

“日本の化繊ってかなり進化してる。でもここまで評判良い生地はなかなかないかも”(武井)





W: このシリーズは秀逸だよねぇ。いつも欲しくなる服をリリースしている。

R: ですよね。今秋冬の新作を選んできました!

T: 評判いいですよね。オレ、実物を見るの初めてなんですよ。

R:  素材は前回と同じです。これが良すぎて変えられないらしくて。小松マテーレの素材を使っていて、内側を裏起毛させたっていう新しい企画です。本当に家からレストランまで着ていける感じですよね。光沢感があって、着たときにドレープも出るのが上品だし。

W: やっぱり素材感が良いんですよね。

T: 日本の化繊ってかなり進化してる。でもここまで評判良い生地はなかなかないかも。

W: クセになるのかな。新色が出たら買い足すっていう人の気持ちはわかる気がします。いっぱい持っていても飽きない。尾花(大輔)くんって、やっぱりスゴい人なんだよねぇ。リスペクトっす。

T: あとはシルエットもポイントだよね。

W: どう組み合わせてもサマになりますしね。組下を別のブランドのスウェットパンツやスラックスにしても合うだろうし。逆にカチッとしたジャケットにこのイージーパンツでもサマになる。一着持っておくと便利だし、すぐに完売するのはわかる。2021秋冬シーズンも期待を裏切らないラインナップでした。


化繊素材や化繊加工において世界的な評価を獲得している小松マテーレと、UNITED ARROWS &SONS、そしてN.HOOLYWOODのデザイナーである尾花大輔がタッグを組んだコラボレーションラインは毎シーズン大好評で定番シリーズ化。上質感がありながら日常的に使い易い素材を活かしながら尾花大輔のデザインによって生み出されるプロダクトは「病みつきになる」との声も多い。今シーズンはアップデートさせた生地「+10」を採用したシリーズが新たにラインナップ。

UNITED ARROWS & SONS by DAISUKE OBANA フーディー ¥23,100、パンツ ¥22,000、クルーネック ¥18,700 /ユナイテッドアローズ&サンズ  TEL : 03-5413-5102

後編に続きます。後編は12月6日公開予定。



(左から) 渡邊敦男(『PRODISM』編集長)、スタイリスト 来田拓也、武井幸久(HONEYEE.COM)



渡邊敦男(『PRODISM』編集長)

1973年生まれ。『Asayan』、『Huge』などの編集を経てフリーランスに転身。2013年にプロダクトにフォーカスした雑誌『PRODISM』を創刊し、現在も編集長として活動中。メンズファッション、スニーカー、ストリートウェアに通じており、独自の美学を持つ。

スタイリスト 来田拓也

1986年生まれ。甲斐弘之氏に師事し、2012年に独立。メンズファッション誌を中心に活躍。トレンドを敏感に取り入れたプロダクトスタイリングにも定評がある。現在アシスタント募集中。

武井幸久(HONEYEE.COM)

1972年生まれ。雑誌『EYESCREAM』の編集者を経てHONEYEE.COMの編集長に就任しつつ1年で退任。フリーの編集者、クリエイティブディレクターとしてブランドサイトやメディアの立ち上げに携わり、2021年秋にHONEYEE.COM編集長に出戻り就任。