デスティネーション・ストア | File 051
2024.09.27

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 051:FREEPARK(東京都・自由が丘)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 051は自由が丘の街中であえて少し隠れるように半地下にお店を構えるコンセプトストア「FREEPARK」。

Text Takaaki Miyake

ITバブル期に始めたフィジカルストア

駅を中心に昔ながらのブティックや有名なパティスリーが立ち並び、どこかクラシックなイメージが漂う街の自由が丘。賑わう駅前から5分ほど歩いた静かな沿道に、今回のデスティネーション・ストア「FREEPARK」は存在する。

昔からプロダクトデザインが好きだったというオーナーの保田太郎​​さんが、「様々なブランドや作家の作品が、公園へ自由に集まるように」という想いを込めて名付けたこの店名。店内には器やアクセサリー、お香などの生活雑貨屋、FreshServiceED ROBERT JUDSON などファッションブランドのアイテムまでが揃う。

一度は自身でもデザインを学んだという保田さんだが、どのようにしてセレクトをする側としてコンセプトストアを立ち上げるに至ったのだろうか。

「洋服やシューズよりも難しいデザインだと思っていたので、ジュエリーを専門学校で学んだんです。卒業後は結局先輩に誘われて、在学中からよく通っていたクラブでバーテンやフロアマネージャー、DJもやっていました。

当時はIT元年だったのでクラブにそういった業界の人も遊びにきていて、その繋がりからECサイトの構築をする会社に入りました。会社は順調に成長していたのですが、もっとお客さんに寄り添った、オフラインのことがしたいなと思って独立を決めたんです」

時代がオンラインへと向かう中、IT業界で経験を積んだからこそリアルな部分を大切にすべく、「FREEPARK」は2008年に駒沢公園近くの雑居ビルの2階であえて実店舗での営業を始めた。

各所を渡り歩いた10年

取り扱っていたのは、保田さんが買い付けたスニーカーやデザイン会社の作るプロダクトなど、現在と同じようにミックス感のあるラインナップだったという。

「自分の感覚で面白いと思うモノを集めていたら、海外が8割、日本が2割ぐらいのアイテムの比率になっていました。Instagramもまだない時代だったので、ひたすらオンラインで調べたり、自分で海外に直接見に行ったりしていましたね。日本で一番早く取り扱っていたブランドもあったのですが、国内代理店がついて数年すると撤退みたいな状況も何度か経験しました」

土地柄から大学教授や近くに住むデザイナー、スケーターなどユニークな層から支持され、口コミとともに自然と客足も増えていった。その人気とともにスペースが手狭になったことで、わずか1年で移店することになり、新たに三軒茶屋で見つけたスペースでは3倍の広さを確保して再出発を図った。

ところがその三茶での営業も2年ほどが経過したところで、出店依頼の声がかかり、 渋谷 PARCO へと再び移転。その後さらに KITTE丸の内表参道ヒルズMARINE & WALK YOKOHAMA と、現在の姿からは想像もつかない大型の商業施設を約10年も渡り歩いた。

「影響力もありますし、館によってそれぞれ特徴があって面白かったですね。KITTE丸の内は東京駅というロケーションもあって、地方から出張帰りの方がギフトを探しにきてくれたりもして」

再び立ち戻った原点

そんな中パンデミックの影響を受けたことから営業が困難になり、再び原点である路面でのお店作りを目指していった保田さん。

「その機会に一度原点に戻ろうと思ったんです。商業施設内で営業していた時は、休館日以外は一切休むことができませんでした。長年かけて酸いも甘いも噛み分けてきて、なんだか色々と吹っ切れた瞬間に『自由にやろう』という気持ちになれました。

昔から自由が丘はブティックやインテリアショップが多くて、昭和と現代の雰囲気が混在しているような雰囲気が好きでした。そのせいか来店してくださるのはナチュラルな方が多いですね。あとは偶然立ち寄るよるというよりも、SNSで知ってくれて目的地にして来てくれる若い方も思いのほか多い印象です」

適正価格へのこだわり

店内には絶妙なリアルさとデザイン性が調和する、ついつい手に取りたくなるようなアイテムが数多く並ぶが、そこにはモノが氾濫する現代だからこそのセレクト哲学が反映されている。

「仕入れの際に“適正価格”というのは強く意識していて、シビアに判断をしています。今って『こんな高いのどうだ』という時代ではないと思っているし、欲しいって思ったものが買えるときが一番買い物って楽しい瞬間なわけで。ウィンドウショッピングも楽しいけど、所有するっていう幸福感をここで感じてほしいです」

これは決してコスパという浮薄な概念ではなく、物に対しての本来の価値という当たり前だが、近年では軽視されることも多いのが事実だろう。

「安価なモノだけにフォーカスしているのではなく、若い子が憧れを抱いても少し頑張れば買えること、価格を加味しても持って帰りたいと思えることは大切にしています。

それと自分たちのフィルターを通して、プロダクトのストーリーもお客さんにきちんと伝える。そういったアナログ感のあるお店は必要だと信じています」

「プロダクトやお店も増え続ける中で、刺さる人には刺さるようなセレクトとお店作りを今後もしていきたいですね。ここで買い物をすることで、新しい気付きなどが芽生えて、新たな消費活動の視点を持ってもらえれば嬉しいです」

モノや情報に溢れ、”欲しいモノが分からない”この時代だが、「FREEPARK」では”こんなモノが欲しかった”という出会いが待っているかもしれない。

DESTINATION STORES | File 51
フリーパーク | FREEPARK
東京都目黒区自由が丘2-8-13 コーレックス自由ヶ丘 1F
営業時間:12:00〜19:00
https://www.free-park.jp/
https://www.instagram.com/freepark.jp