デスティネーション・ストア | File 048
2024.08.16

デスティネーション・ストア | HONEYEE.COM的個性派シティガイド 
File 048:DOWNTOWN(東京都・月島)

スマートフォンでどこにでも行った気になれる時代。むしろスマートフォン片手に「ここにしかない」を体感しに行ってみてはどうだろう。HONEYEE.COMが選んだ“目的地になる店”を紹介する連載「デスティネーション・ストア」。File 048はもんじゃ焼きで有名な月島で見つけた、アイウェアのスペシャリスト二人が営むお店「DOWNTOWN」。

Text Takaaki Miyake

目印はネオンサインの“眼”

近年では海外からの観光客も多く訪れるようになった東京都・中央区の月島だが、そのほとんどの目的はこの地に根付くソウルフードのもんじゃ焼きだろう。そんな月島ならではの通称「もんじゃストリート」を一本入った路地裏に、今回のデスティネーション・ストア「DOWNTOWN」は存在する。

控えめなロケーションにある店先で、看板役としてしっかり存在感を発揮する“眼”のネオンサイン。これこそが入り口の目印であり、メガネ専門のセレクトショップ「DOWNTOWN」の象徴だ。

元々は2020年に近隣エリアでお店をオープンしたものの、開発の煽りを受けて現在の場所へ移転して2022年に再スタートを図った「DOWNTOWN」。店内はカルチャーやデザイン好きには嬉しい書籍が並び、イギリスのハイエンドスピーカーメーカー B&W のスピーカーから流れる上質なアナログミュージックなど、目だけでなく耳からも楽しくなってしまうような空間が作り上げられている。

こういった嗜好も、代表を務める原崇さんがファッション業界に10年ほど身を置いていたというバックグラウンドが反映されているに違いない。

同級生と叶えた夢

その原さんがメガネと出会った原点、そしてお店をオープンするにまでいたった経緯は何だったのだろうか。

「子供の頃から眼鏡はかけていたのですが、やはりどうしてもイメージが良くなくて。だけどファッションを好きになっていくうちに、ミュージシャンがサングラスをかけているとすごくカッコ良く見えたんです。

ファッションとしてアイウェアを認識した瞬間に、その昔からのネガティブなイメージを一気に払拭できました。なのでいつかは自分のメガネ屋を持ちたいと思っていましたね」

ところが一度はファッションの世界へ足を踏み入れることを決意。その間もふつふつと「メガネ屋を開きたい」という想いを抱きながら、接客やバイヤー、プレスといった幅広い経験を積んでいったという。

「実は僕も店長の中山勇佑​​も福井県出身で、小中学校の同級生なんです。いつかはそんな二人でお店をできたらと思っていたのですが、彼が GLOBE SPECS で10年の修行を終えたのが全ての条件が揃ったという一つのタイミングでした」

「DOWNTOWN」では MATSUDAJACQUES MARIE MAGE10 EYEVANYUICHI TOYAMA. といったハイエンドかつミックス感のあるラインナップも魅力の一つだが、中山さんが培ってきた技術力が支える検眼からレンズの加工、一人一人の顔の形に合ったミリ単位の調整まで細かいサービスも強みと言える。

顔の見える眼鏡屋

さらにユニークなのは独自で行うビジュアルの制作や、お店のInstagramやYouTubeチャンネルだけでなく、中山さんや他のスタッフも積極的に個人のアカウントでコンテンツ発信をしている点だ。

アパレル業界ではよく目にする光景だが、アイウェア専門店では珍しいこの手法を原さんはどのように感じているのか。

「僕らとしては顔に着けるモノだから、自分たちも顔は出すべきだと自然にやっていたことなんです。当たり前と思っていたことが、実際にはこの業界ではそうでなかったことに気が付きました。YouTubeでも色々と熱く語っていると『この人からメガネを買いたい』とか、一種の安心感を持ってもらえた結果が現在の来客に繋がっているのかなと思っています」

下町だけじゃないダウンタウン

特徴的なこのロケーションで今後も拡張を続けるかと思いきや、「DOWNTOWN」の今後について聞くと原さんは次のように教えてくれた。

「これからは月島エリア以外の場所にも進出していきたいと思っています。店名もコンセプトも含めて下町でやってきましたが、あえて言うならばここである絶対的な必要性も感じていません。オープンからまだ数年という短期間ながらも、ある種の手応えは感じているので『DOWNTOWN』の哲学や方法を再現性を持ってチャレンジしていきたいです。

ファッションと比べるとまだ関心や熱量は少ない領域と言えるアイウェア。最終的な「DOWNTOWN」の目標は、活動の幅を広げながらその面白さや魅力を伝えていくことだという。

「国内ではまだ一般的には浸透していない、伊達メガネやサングラスも普及していければ良いですね。さらには他のメガネ屋のコンテンツ作りやSNS発信なども僕らが協力できれば、コンサルティング的に入ったり、とにかくアイウェアの世界を広めたい思いが強くあります。なので業界の中で一人勝ちみたいなことは全く考えていません」

敷居を下げるためにオプティカルや眼鏡店をあえて店名に使わなかった「DOWNTOWN」。普段はメガネに興味がない方も、クールなアイウェアともんじゃ焼きを求めて月島に足を伸ばしてみよう。

DESTINATION STORES | File 48
ダウンタウン | DOWNTOWN
東京都中央区月島1-20-5
営業時間:11:00〜18:00
https://downtownmegane.com/
https://www.instagram.com/downtown_megane/